雪間に見つける

湯守のみ知る谷筋の蕗の薹

雪の宿の庭など、雪解けを待ちかねたかのようにあちこち顔を出しているのを見ることがある。

新潟でもそうだったし、飛騨の奥でもそうだった。
雪間に水芭蕉は4月から5月頃の光景だが、雪間の蕗の薹は3月の景色である。
寒地でそういう具合だから、雪のないところでは今月下旬ともなれば顔をだす時分だ。
毎年そうなんだが、蕗の薹ってけっこう見逃すことが多く、たいがいが薹がたってしまって食べ頃を逃したころに気づくことが多い。
今年は人の多い散歩道を避けて、新しいルートを開拓すれば天麩羅にするくらいの数を拾えるかもしれない。

水無田

菖蒲田の畦もろともに焼かれけり

菖蒲園の株がみな真っ黒だ。

雑草もろとも焼いて、発芽をうながすのであろうか。
今年も四月に入れば花菖蒲の芽をくっきりと認めることができそうである。
今は水が抜かれているが、芽が伸びて菖蒲田らしくなるのはいつのことであろうか。

手品師

糸ほどく気配のみえて金縷梅

まるで手品師の仕掛けを見るようである。

冬の間はあれほど小さくて固かった花芽がふっくらとしてきた。あのなかに糸をまきまきしているのだ。それを一斉にほどいて万作独特の形の花が飛び出すのだ。
もう少し経過を見ていこうと思う。

駆け足

欠けめなく角芽出そろふチューリップ

公園のチューリップの球根が芽を出した。

暮れから年初にかけて植えていたので意外に早いと思ったが、思い出してみれば球根たちのなかには植えたときにすでに芽を出し始めていたのがあったので不思議ではない。
だが、ここ数日同じ寒さの中にも冷え込みが穏やかになった途端芽を出すのだから、その生命力のたくましいことよ。
もう春の駆け足が聞こえてくるようだ。

初物をいただく

きのうけふ数へるほどのいぬふぐり

四温晴というのだろうか。

ようやく、春のさきがけらしい日に恵まれた。
ここ一週間ほど、鼻がむずむずするため用心にマスクでしっかりガードして散歩へ。
枯れ野に下草が芽生えてはきていたものの、青きを踏むとまでいかなかったが、今日は犬ふぐりがぽつぽつ咲き始めているのに気がついた。春は一歩ずつ前へ進んでいるのはまちがいない。
ただ、さすがに最盛期のように満天の星とはいかないようで、数はひいふうみいようと数えられるくらいのもの。
鳥たちも一部は春の囀りではないかと思える鳴き方をするものもいて、春の先取りをいただいたような日であった。

残り福

春霜や猫と覚ゆる侵入痕

先日雪が降った朝、道路から玄関に点々と足跡がついていた。

最近、女の子を探しによくやってくる猫の足跡のように思う。
わずか二三センチの、浅い雪だったのですぐに消えてなくなったが、それにしても雪をもかまわぬ恋猫であることよ。
その後も相手が見つかってないのか、毎日二三回は巡回しに来るようである。
恋敵はとうに姿を消して、この子だけが取り残されているようである。
バレンタインの日も過ぎたし、チャンスは残り少ないぞ。頑張れ、頑張れ。

和風

赤だしと鯖煮のバレンタインの日

老の身二人の暮らしには縁のない日かも。

赤味噌には旨味を引き出す成分が多いということを最近聞いて、久しぶりの赤だしのお椀である。鯖の味噌煮も色濃くて、チョコレート色に似ていなくもないが、メニューはこの日を意識したわけではなさそうだ。
隠し味にもいいということで、酒粕もよく使っているようだ。
何でもかんでも入れればいいと言うので、パンを焼くのにも酒粕を入れているようだが、普通より膨らむようでそのマジックには驚かされる。
発酵食品バンザイである。